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篠原常一郎が数百人を名誉毀損で訴える問題(基礎編)

ラベンダー

こんにちは、ラベンダーです。

何か、調子が上がらない日々が続いてます。

そろそろ皇位継承問題も書かないといけないし、忙しいのですが、

今日は、特殊なネタで「篠原常一郎が数百人を名誉毀損で訴える」問題についてやります。

常連の読者の皆様はご存じかと思いますが、私の本業は「マコムロ問題」

日本有数のマコムロ問題の専門家を自称してますが(汗)

裏芸として、「皇室への誹謗中傷問題」に取り組んでおります。

名誉毀損とか侮辱とか、誹謗中傷問題については、かなり研究してます。

そこで今回から「篠原常一郎が数百人を名誉毀損で訴える」問題をやりたいと思います。

ただし、

今回は、誹謗中傷問題の基礎知識を確認いたします。

今回の情報については、篠原氏に興味のない方でも有益だと思われますので、ぜひお付き合いください。

篠原氏の問題について、具体的な話は次回にやります。

目次

はじめに

まず最初に立場を明らかにしておきますが、

私は、「愛子天皇派」でも「男系男子派」でもないので、党派的な観点から賛成反対はありません。

私の皇位継承についての立場は、昔説明したことがありますが「民主主義派」という特殊なものなので、それは別の機会に説明します。

篠原常一郎VSアンチのバトルについては、どちらの味方でもございません。

ただし、私は、皇族への誹謗中傷続ける篠原常一郎を悪質な「誹謗中傷系ユーチューバー」と認識してますので、篠原常一郎を応援することは永久にないと思います。

だからといって、篠原常一郎を叩くのが今回の目的ではございません。

それはアンチの皆様にお任せします。

今回の記事を書くキッカケは、篠原常一郎VSアンチのバトルを見てたら、

インターネット上の名誉毀損について

両方がテキトーなことを言い過ぎてる

のが問題だと感じたからです。

支持者や視聴者の皆様が、

このまま両方から発信されてるテキトーな虚偽の情報を信じたままだと、

事故・事件を起こす人が多発するのではないか?

そういう危機感を感じました。

篠原常一郎とアンチユーチューバーがバトルするのは自由ですが、それぞれに支持者やファンの方が大勢いるわけですよ。

デタラメな危険情報、安易な安心情報を流して、支持者なり視聴者の方を危険にさらすのはね、

どうかと思いますよ。

そこで

両方の視聴者さんや私のブログの読者の皆様が、インターネット上の名誉毀損についての正しい知識を得て、健全な書き込みや意見表明していただきたい。

法的な事故や事件を起こさないよう、

できるだけ正しい話を知って欲しいという意味で、この記事を書くことにしました。

もちろん私も万能ではないので、誤認してる点もあろうかと思いますが、その点についてはご指摘いただければ幸いです。

以上の点、ご理解ください。

「原則」「例外」思考

まずは、基本的な知識の確認ですが

その前に、ひとつだけ言っておきたいことがあります。

ネット言論の弊害だと思いますが、法律は白か黒と思ってる人が多いようです。

とにかく、白か黒かという極端な話しかしない人が多いです。

でも、学者とか弁護士とか専門家の書いたもの見てみてください。

法律の世界は「原則」と「例外」の世界

法律の規範は、

(原則)〇〇 (例外)△△

という感じになってることが多い。

「原則」と「例外」がセットになってます。

法律を勉強したことない人は、法律は杓子定規で白か黒かの世界だと勝手に思い込んでるようです。

でも、人間社会はそんな簡単に白黒割り切れるものでないので、法律も柔軟に事例に合わせて白にでも黒にでもなるという具合に作られてます。

そこで重要になるのが「原則」と「例外」。

「原則」と「例外」を調整することで、複雑な人間社会の様々な問題に対応できるようにする。

何が「原則」で、どういう場合に「例外」になるのか。

いわゆる「判例」(裁判例)と呼ばれるものは、それを明らかにしたものだと言えます。

「原則」「例外」思考

法律の世界の基本。

だから、まともに法律勉強したことある人は、「原則」「例外」思考が自然に身についてるはずです。

逆に、「原則」「例外」思考ができなくて、何でも杓子定規に白とか黒とか言いきってしまう人は、インチキ率が高くなると思います。

だから、この「原則」「例外」思考は、本物か偽物かを見抜く基準にもなるので、覚えておいて欲しいと思います。

刑事事件の可能性

さて、本題に入りますが

名誉毀損や侮辱が問題になった場合、まず考えたいのは、

「刑事事件」か「民事事件」か?

刑事事件の対象になるのか、それとも当事者間の民事紛争なのかが問題です。

で、刑事事件ですが、

名誉棄損や侮辱の場合、めったに刑事事件になることはありません。

2021年に、タレントの堀ちえみさんのブログに159回「消えてくれ」と書き込んだ女が書類送検されましたが、そのくらい酷い事例でないと動いてくれないです。
(ただし、この事例では、名誉毀損ではなく迷惑防止条例違反での送検)

名誉毀損や侮辱で警察・検察が動いてくれることは、なかなかない。

で、刑事事件になりうる名誉毀損や侮辱は、当然、民事でもアウトです。

民事でアウトで悪質なものが刑事事件になりうるので、民事でアウトかどうかを検討すればそれで足りると思われます。

ただし、

名誉毀損や侮辱以外では、警察が動いて刑事事件になることはあります。

代表的なのは、脅迫や業務妨害でしょうか。

たとえば、「Aは詐欺師だ」という書き込みをした場合、これは名誉毀損の問題なので、警察が動いてくれることはまずありません。

しかし、「Aは詐欺師だ、殺すぞと書いたら、これは脅迫なので、刑事事件として警察が動く可能性が高まります。

同じように、「Aは詐欺師だから、事務所へ毒を送ったと書けば、業務妨害になりうるので、刑事案件になる可能性が高まるということです。

2017年、有名俳優A氏に対して「違法薬物を使っている」との虚偽の記事を作成し、ブログに掲載していた人物が書類送検されましたが、これは名誉毀損ではなく偽計業務妨害容疑

「違法薬物を使っている」という話が流布すれば、俳優の仕事ができなくなるので、業務妨害したというロジックだと思われます。 

もちろん、名誉毀損や侮辱なら、やってもOKというわけではありませんが、

脅迫とか業務妨害などの書き込みは、ストレートに刑事事件になる可能性があるので、絶対にやめましょう。

自分の書き込みが、脅迫や業務妨害に該当するかどうかは、激しく注意をすべきです。

名誉毀損や侮辱で刑事事件になるのは、ストーカー案件のような、長期間にわたって広範囲に名誉毀損書き込みを繰り返すような、よほどの悪質な場合に限られると考えてよいかと思われます。

だからOKというわけでは、もちろんありませんが、

現実的には、名誉毀損や侮辱は、民事の問題だということです。

名誉毀損と侮辱の違い

名誉毀損とは、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為のことです。

名誉毀損に該当する行為により被害を受けた場合には、加害者に対して民事上の責任を追及することができる(民法723条)わけですが、いったいどんな誹謗中傷が名誉毀損になるのでしょうか?

この記事は、一般の方向けなので要件や抗弁の話は省略します。

今、皆さんが気にしてるのは、

〇 自分がネットに書き込んだ発言が名誉毀損になるのか?

〇 ネットに書き込まれた自分への発言が名誉毀損になるのか?

ということですよね。

だから、ネット中傷を判断をする話にフォーカスします。

で、まず最初に、法に触れるネット中傷は

(ア)名誉毀損(名誉権侵害)

(イ)侮辱(名誉感情侵害)

の大きく2種類に分類されます。

そもそも名誉について、最高裁は「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉」としています(最大判昭61・6・11)

ザックリ言えば

名誉 = 社会的評価

つまり名誉毀損というのは、「社会的評価を低下させる行為」

精神的苦痛ではないのでご注意ください。

たとえば、

ある人を「殺人者」と書き込むのは、社会的評価を低下させる中傷なので、これは名誉毀損。

それに対して、ある人に「死ね」というのは、中傷ではあるけど、それで社会的評価の低下は起こらないので、侮辱(名誉感情侵害)の問題だと考えられてます。

違法となるネット中傷の種類

(ア)「社会的評価の低下」させる中傷 ⇒ 名誉毀損

(イ)「社会的評価の低下」なし ⇒ 侮辱

では、なぜ、この2つを分類するかというと、

違法認定や損害賠償額が違う

からです。

その中傷によって、「社会的評価の低下」があるのか、ないのか。

これが実務的に、めちゃめちゃ重要な話になってます。

「社会的評価の低下のあるなしの違い

(ア)「社会的評価の低下ある中傷をした場合(=名誉毀損)

違法認定されやすく、賠償額も高めで、「一発アウト」であることも多い。

(イ)単なる侮辱の場合

違法認定されにくく、賠償額も低めで、「一発アウト」にはなりにくい。

名誉毀損なのか侮辱なのか?

つまり、そのネット中傷により

「社会的評価が低下するか?」

それが非常に重要。

では、名誉毀損侮辱

細かく見ていきたいと思います。

名誉毀損

名誉毀損の成否については、

1.「社会的評価の低下」はあるか?

2.「事実摘示」型か「意見論評」型か、

3-1.「事実摘示」型なら「摘示事実は真実か」

3-2.「意見論評」型なら、(ア)意見の前提事実は真実か(イ)表現は適切か

という流れで判断します。

「社会的評価の低下」はあるか?

「社会的評価の低下」の有無によって、名誉毀損と侮辱に分類されるのは、先ほど説明したとおりです。

ネットへの書き込みによって相手の「社会的評価の低下」があれば名誉毀損が成立しうるわけですが、この場合、「評論」や「個人の感想」でも名誉棄損は成立します。(最三小判平9・9・9)

なので、個人の感想だから名誉毀損は成立しないという論法は、通用しないです。

評論だから、何を言っても許されるというわけでもない。

「社会的評価の低下」があれば、評論だろうと個人の感想だろうと名誉毀損は成立しうる。

ご注意くださいませ。

「事実摘示」型

名誉毀損は、「事実摘示」型と「意見論評」型に大別されます。

「事実摘示」型というのは、たとえば「○○さんは、不倫歴が3回ある」というような中傷です。
(プライバシー侵害の点はここでは考慮しません)

この「事実摘示」型の場合、「不倫歴3回」というのは、意見ではなく事実を述べたもの。

なので、「不倫歴3回」が、真実かどうかが問題となります。

本当に不倫歴3回なら名誉毀損は不成立で、不倫歴3回が虚偽なら名誉毀損。

原則は、そうなります。

ただし、「真実と信じるにつき相当な理由」(真実相当性)がある場合、免責されるという例外があります。

これは篠原常一郎問題でも重要な論点になりますので、詳しくは、後日お話しする予定です。

「意見論評」型

「意見論評」型というのは、たとえば「〇〇病院は患者を搾取してる」というような中傷です。

「患者を搾取してる」というのは、意見・論評なので、それ自体を証拠で証明することはできません。

「患者を搾取してる」という結論を導き出した前提となる事実について、真実かどうかが問題となります。

前提となる事実について、真実であれば名誉毀損は不成立で、虚偽なら名誉毀損。

さらに、

「意見論評」型については、(イ)表現は適切か、という点も問題になります。

たとえば、「あの教師は、最悪のクズ教師」という意見を言ったとして、

仮に、前提となる事実について、その教師が酷いという事実が証明されたとしても

「最悪のクズ教師」という表現が適切かどうかが問われます。

表現が適切でないと判断されれば、名誉毀損が成立。

いくら酷い教師であったとしても、言い方があるだろう、ということですよ。

だから、論評自体が問題ないものであっても、表現が適切でないと名誉毀損になりうるということは、十分に注意していただきたいと思います。

これは、私自身も自戒しなければならない点だと思っております。

以上が、名誉毀損です。

侮辱(名誉感情侵害)

「バカ」とか「アホ」とか、「社会的評価の低下」とまではいえない中傷。

そういうものについては、名誉毀損は成立せず、侮辱(名誉感情侵害)の問題になります。

侮辱については、侮辱すれば全部アウトというわけではありません。

というか「バカ」とか「アホ」とか、そういう言葉が全部違法になる社会というのは、言論の自由のない管理社会、独裁国家のような国になるでしょう。

人間社会、ある程度の侮辱や悪口が存在するのはやむを得ない。

そこで最高裁は、「社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて被上告人の人格的利益の侵害が認められ得る」(最三小判平22・4・13)として、

「社会通念上許される限度を超える侮辱行為」であれば違法だとしてます。

判例では、「バカ」くらいでは侮辱は成立せず、「死ね」であれば状況次第では侮辱だと判断されてるようです。

「社会通念上許される限度を超える侮辱行為」なので、1回の書き込みで違法認定されにくい。

さまざまな事情が相まって、違法認定される展開が多いと思われます。

それに比べて名誉毀損の場合は、「社会的評価の低下」という実害が発生してるわけですから、1回の書き込みでもアウトになりやすい。

たった1回「殺人者」と書きこんだだけで、15万円の損害賠償認定された例もありますので、名誉毀損と単純な侮辱とでは、違法になるハードルに大きな違いがあります。

以上が、侮辱(名誉感情侵害)です。

名誉毀損問題を検討する基礎知識を確認いたしました。

この基礎知識を使って、

次回からは、具体的に「篠原常一郎が数百人を名誉毀損で訴える」問題をやります。

簡単に経緯と動画を紹介しておきます。

「篠原常一郎が数百人を名誉毀損で訴える」問題

事件の経緯を説明すると長くなるので、簡略化します。

1.篠原氏には、税金(予定納税)の滞納があった。

2.その税務署からの書状をユーチューブ配信で見せながら、「権力からの圧力があった」として、視聴者へ金銭支援(銀行振込、現金書留)を求めた。

3.多くの視聴者から金銭支援が行われた

4.それを見た別のユーチューバーなどが、「権力からの圧力」なんてない、それは乞食行為ではないか、詐欺ではないか、と批判。

5.それに対して、篠原氏が名誉毀損として法的措置をすると動画で宣言。

6.その法的措置宣言に対して、いろんな人たちがさらに批判。

というのが現在までの流れの概要です。

代表的な動画の紹介

<篠原氏への批判>

<篠原氏の法的措置宣言>

<篠原氏への反応>

「篠原常一郎が数百人を名誉毀損で訴える」問題

いろいろ疑問だらけですが、

次回以降は、篠原側の法律上の問題点、アンチ側の法律上の問題点を指摘したいと思います。

できるだけ早く書く予定ですので、次回もよろしくお願いいたします。

ラベンダー

ではまた

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オクラ
オクラ
6 months ago

こんにちは ラベンダーさま
とてもわかりやすい解説ありがとうございます。私のような門外漢にもすっと頭にはいってきます。

篠原氏の件は、予定納税を滞納して督促されたのを「権力の弾圧」と主張する時点で私には意味不明で(一般的に税金滞納すると、給与の一部を差し押さえられたり不動産を競売にかけられたりしますよね)、以後関心をもってなかったのですが、こんなことになっていたのですね。
篠原氏とアンチのバトル、いったいどういう論理を主張してるのか、興味がわいてきました。
次回、期待しています。
またよろしくお願いいたします。

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