（速報文春砲）岸田首相も統一教会の仲間

（前略）

閣僚に統一教会との関係の点検、見直しを言明した岸田首相だが、「私個人は当該団体と関係はない」ときっぱり明言していた。その言葉は本当なのか。

　一般社団法人「全国教育問題協議会」(全教協)が発行している機関誌「教育問題」。20年9月発刊号に、岸田氏は「コロナ禍後の人づくり」というタイトルで寄稿していた。全教協のHPでは8月27日に寄稿が“予告”されていたが、折しも9月14日投開票の総裁選目前だった。さらに前年の19年9月4日には、全教協の役員会に出席し、挨拶もしている。

　だが、全教協は単なる教育関係の組織ではない。教団の関連団体なのだ。

　例えば、役員の青津和代氏。「国際勝共連合」の政策局長として、政界工作を担当してきた人物だ。ジャーナリストの有田芳生氏が入手した勝共連合の内部資料には〈青津さんは(略)全国教育問題協議会の事務をしている関係上名前を変えています。勝共の青津は使っていません〉などと記されていた。青津氏にとって、教団色を薄める肩書きだったことが窺える。

「全教協の副理事長は90年代に世界日報記者だった人物。役員には世界日報編集委員も名を連ねていました」(自民党関係者)

　全教協の中尾健三理事長はこう語る。

「青津さんは今も会員ですが、事務局は本人の意向で今年3月31日に辞めています。岸田さんを会合に呼んだのは、私が広島在住で支援者だから。その流れで寄稿もお願いしました」

岸田首相と統一教会との関係はそれだけではない。

冒頭の場面に戻ろう。

　20年7月31日、熊本岸田会の会長に就任したのが、崇城大学の中山学長だった。

「中山氏は蒲島郁夫知事と近く、自身も知事選出馬を模索したことがある県内の有力者です。昨年の総裁選で、岸田氏が党員票で1位を獲得した都道府県は全国で8県だけで、そのうちの一つが熊本だった。結果を残した中山氏は鼻が高そうでした」(地元県議)

　実は、そんな中山氏には“別の顔”があった。総裁選の3カ月半前の昨年6月20日、ホテルメルパルク熊本で、“ある団体”の10周年記念総会に出席していたのだ。「日韓トンネル推進熊本県民会議」。約70名の参加者を前に、中山氏は高らかにこう挨拶した。

「10周年を契機に、さらに活動を推進したい」

　果たして「日韓トンネル推進熊本県民会議」とは一体、どんな組織なのか。

「統一教会の教祖・文鮮明氏は1981年、世界を高速道路で繋ぎ、統一世界の実現を目指す『国際ハイウェイプロジェクト』を提唱しました。その第一歩として打ち出したのが、日本と韓国をトンネルで結ぶという『日韓トンネル構想』です。全長は200キロ、総工費は10兆円に及ぶとされます」(社会部記者)

　実際、佐賀県唐津市では86年に調査斜坑が起工された。が、現時点で500メートル程度の長さのトンネルが掘られたに過ぎない。全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士が言う。

「統一教会は『日韓トンネルを造るため』という名目で多額の献金を集めてきました。かつては1ミリ掘るために5万円という『1ミリ5万円献金』もあったほどです。中には1000万円単位の被害者も複数いる。計画自体は荒唐無稽なものですが、教団は地元の名士や議員を巻き込むことで、信者たちに教団の影響力をアピールしてきたのです」

後援会長は「目標は達成した」

　09年には「一般財団法人国際ハイウェイ財団」を設立。徳野氏ら会長経験者が評議員を務めてきた。16年には韓鶴子氏が来日し、トンネルを視察している。

「国際ハイウェイ財団の旗振りで、10年から日本全国に推進会議が設立されるようになった。11年に発足したのが、熊本県民会議です」(前出・記者)

　その日韓トンネル熊本会議の議長を発足当初から務めるのが、岸田氏の後援会長でもある中山氏なのだ。

　議長として取り仕切った16年開催の総会。韓国側からも、韓日トンネル研究会の朴成烈理事ら少なくとも3名が参加した。中でも朴氏は、かつて日本の統一教会の幹部としても活動してきた大物信者だ。

「ただ、反日的な統一教会の教義とは裏腹に、日韓トンネルは表向き、日韓友好を掲げてきました。関係者には政治と近い面々も多い。中山氏はこうした政界人脈も通じ、岸田氏の党員票獲得に動いてきたと見られます」(県政関係者)

中山氏に話を聞いた。

「日韓トンネルは発起人に入っている市議に会長(議長)になってほしいと言われ、引き受けた。私が出ているのは、年に一度の総会くらい。韓国では日韓トンネルをやっているのは、旧統一教会系と聞いたことがあります。だけど、熊本でそういう人が関わっている印象は全くありません。

　熊本岸田会も最初はお断りしていたけど、どうしてもということで引き受けた。岸田さんと最初に会ったのは、19年12月。話も聞いてくれる好人物と思った。こっちは、総裁選で岸田さんに入れてくれる党員を増やそうという目的で。目標は達成できましたね」

　こうして首相に就任した岸田氏。その直後の昨年10月31日、衆院選に挑んだ。従前から力を注いでいたのが、19年の参院選を巡り、有権者買収で有罪となった河井克行氏の地盤だった広島3区だった。

「問題の参院選で党本部が優遇した河井案里氏が当選した一方、岸田派の溝手顕正氏は落選。執行部に強い不満を抱いた岸田氏は一時、公明党と対立してまで、後継候補に県議だった石橋林太郎氏を据えようとしていました」(与党担当記者)

　最終的な候補者は、公明党の斉藤鉄夫氏。ただ、石橋氏は比例中国ブロック1位で処遇され、当選後、岸田派に入会している。いわば“秘蔵っ子議員”だが、

「石橋氏は教団関連イベント『ピースロード』の共同実行委員長を務めていました。本人は『関係を知らなかった』と説明していましたが、父で元県議の良三氏(故人)も教団との関係が深かった。『日韓トンネル推進広島県民会議』の議長で、全国組織の『日韓トンネル推進全国会議』でも幹事長を務めていた。親子ともに右派寄りですが、教団との関係が親密だったのです」(県連関係者)

　石橋氏はこう答える。

「私自身はこの春、世界平和女性連合の会合に出ており、この団体が統一教会に近いと指摘を受けました。ただ、統一教会から選挙支援は受けていません」

　さらに、岸田氏自身の選挙ではどうか。広島市東区の選対責任者を務めたのが、緒方直之県議だ。自身のSNSでは、20年の総裁選で石橋氏と関西方面の県連に岸田氏支持を訴えていたことなどを綴っている。

「昨年の衆院選でも地元に入れない岸田首相に代わって遊説を重ね、支持を求めていた。首相にとって、“広島の懐刀”と呼べる人物です」(地元記者)

　この緒方氏が共同議長を務めるのが、「広島県平和大使協議会」。安倍氏がメッセージ動画を送った「天宙平和連合」の付設機関だ。天宙平和連合会長の梶栗正義氏は最有力幹部。20年6月に開かれた協議会の総会では、緒方氏が梶栗氏の隣に並んで出席していた。

　緒方氏に見解を尋ねると、

「共同議長に就任したのは故・石橋良三元県議(石橋氏の父)からの紹介です。旧統一教会との関係は存じておりませんでした」

　こうした県議らの働きもあって、岸田氏は10回目の当選を果たしたのだった。

（以下、略）

週刊文春 2022年9月1日号　（太字等はラベンダーによる）